TKA術後のVTE予防には抗凝固薬よりアスピリン:観察研究
Low-Dose Aspirin Is the Safest Prophylaxis for Prevention of Venous Thromboembolism After Total Knee Arthroplasty Across All Patient Risk Profiles
背景
2022年の静脈血栓塞栓症(VTE)に関する国際コンセンサス会議(ICM-VTE)は、人工膝関節全置換術(TKA)後のVTE予防には、低用量アスピリンが最適の選択肢であるとしたが、そのエビデンスは不十分であった。
アメリカCleveland ClinicのKamathらは、同国のデータベース(60医療機関)を使用して、2012〜2022年にTKAを受けた患者126,692名を対象とした観察研究を行い、この問題を検討した。
結論
低用量アスピリンを投与された患者の割合は2012年から2022年の間に7.65%から55.29%に増加したのに対し、他の抗凝固剤(ワルファリン・直接経口抗凝固薬・低分子量ヘパリン等)を投与された患者の割合は96.25%から42.98%に減少した。
低用量アスピリンのみの使用は、高リスク・低リスク両集団で約50%に増加したが、高リスク集団と比較して低リスク集団でより多かった(OR 1.17)。低用量アスピリンのみのコホートの低リスク患者と高リスク患者の両方で、他の予防レジメンと比較して深部静脈血栓症(DVT)・肺塞栓症(PE)・出血・感染症・入院のオッズが低下した。
評価
十分な規模の観察試験で、ICM-VTE勧告に相当程度の強固なエビデンスを提供した。一方、JBJS誌Editorialは、抗凝固薬と比べたアスピリン使用時のVTE発生率の著しい低下には、測定されていない交絡因子があるのではないか、と指摘している。また、術後VTEは全体的に減少する傾向にあり、これには、外来手術センターの利用増加や早期回復プロトコルなどの術後ケアの改善が影響している可能性がある、とも指摘している。