全血献血はフェリチン値ガイドで:FIND'EM
Effectiveness of ferritin-guided donation intervals in whole-blood donors in the Netherlands (FIND'EM): a stepped-wedge cluster-randomised trial
背景
全血献血は鉄欠乏性貧血のリスクが高いが、現在のヘモグロビン(Hb)値を基準としたスクリーニングでは、献血者の健康を維持するのに不十分である。
オランダDonor Healthのvan den Hurkら(FIND'EM)は、献血者36,099名から採取した37,621の血液サンプルを用いて、フェリチン(Ft)値を指標とした献血間隔が献血者の健康と血液供給に及ぼす影響を検証するStepped WedgeクラスターRCTを行った。献血センター138施設を29クラスターに分け、各クラスターを4つの治療群に割り当つけ、その2群をプロトコルに従ってさらに2群に分割した。各群は3年間で、Hb値を基準とした献血間隔から、Ft値を基準とした献血間隔に順次切り替えた。介入群では、Hb値に加え、すべての新規献血者と再献血者は5回の献血毎にFt値を測定した。再来献血間隔は、Ft値15〜30 ng/mLの場合は6ヵ月に、15 ng/mL未満の場合は12ヵ月に延長した。
一次アウトカムは、Ft値とHb値、鉄欠乏、およびHb値基準による献血延期である。
結論
38ヵ月にわたるFt値を指標とした献血間隔設定により、期間中にHb値(男性 0.30 g/dL、閉経前女性 0.12 g/dL)とFt値(男性 0.18 log10 ng/mL、閉経前女性 0.10 log10 ng/mL、閉経後女性 0.17 log10 ng/mL)が改善され、鉄欠乏症が減少した(男性 オッズ比 0.24、閉経前女性 0.49、閉経後女性 0.24)。36〜38ヵ月時点で、Hb値に基づく献血延期は、男性では減少したが(OR 0.21)、女性では減少しなかった。
評価
著者らオランダグループが2020に提唱した方法(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32533600/)の有益性を大規模RCTで検証したもので、鉄貯蔵状態を反映するFt値の重視には理論的な意義もある。Hb基準の現行手法をFt基準手法に転換することへの堅固なエビデンスを提出したが、著者らは「介入の実行と維持にはさらなる努力が必要である」ともしている。世界の実践を変えるポテンシャルをもつ結果である。