WGSのWESに対する希少疾患バリアント検出能は明確
Genome Sequencing for Diagnosing Rare Diseases

カテゴリー
Top Journal
ジャーナル名
The New England Journal of Medicine
年月
June 2024
390
開始ページ
1985

背景

希少疾患の原因となる遺伝子バリアントの検出は現在主にエクソームシーケンシング(WES)によって行われているが、結果、不確実な場合に行われるゲノムシーケンシング(WGS)の診断能は未だ確定されていない。
アメリカBoston Children’s HospitalのWojcikらは、単一遺伝子性希少疾患が疑われたが、WES等の遺伝子検査では診断が明らかにならなかった822家族を対象として、WGSの追加価値を検証した。

結論

822家族中218家族(29.3%)で分子診断を行い、61家族中に、同定にWGSを必要とするバリアントを同定した(例:コーディングバリアント、イントロンバリアント、小さな構造的バリアント、コピー数変化のない逆位、複雑な再構成、タンデムリピート伸長)。過去のWESで陰性で、その後分子診断を行った148家族の63.5%では、バリアントはエクソーム配列データを用いて検出可能であったことが示され、53.4%はエクソーム配列データの再解析により検出され、10.8%はエクソーム配列データにコピー数バリアント同定等の解析を追加することで検出された。再現コホートでも同様の結果が得られた。

評価

希少疾患のバリアントの30%はWESでは検出できず、WGSが必要である、という結論である。この研究で使用されたのはショートリードで、著者らは、ロングリードが汎用されるようになれば、精度はさらに増す、としている。メリットは明らかだが、現在WGSはコストがWESの約2.5倍かかっており、費用対効果が大きな問題である。有益性が明確となり、利用が増えれば、コストは漸減してゆくことになる。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(Top Journal)

The New England Journal of Medicine(NEJM)、The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Nature、Nature Medicine、Science、Science Translational Medicine、Cell