四肢骨折外科的整復前の皮膚消毒薬の選択:PREP-IT
Skin Antisepsis before Surgical Fixation of Extremity Fractures
背景
四肢骨折整復手術前の皮膚消毒における、ヨウ素ポバクリレックス(iodine povacrylex)含有アルコール溶液(DuraPrep)と、クロルヘキシジングルコン酸塩含有アルコール溶液(CHG)の選択は。
カナダMcMaster UniversityのSpragueら(PREP-IT)は、北米25施設でこれを検証するクロスオーバー・クラスターRCTを行った。対象患者を、開放骨折集団と閉鎖骨折集団に分けた。一次アウトカムは、手術部位感染(30日以内の表層切開創感染と、90日以内の深部切開創感染または臓器・体腔感染)である。
結論
閉鎖骨折修復手術は6,785例、開放骨折修復手術は1,700例であった。閉鎖骨折集団では、手術部位感染はDuraPrep群の2.4%、CHG群の3.3%に発生した(オッズ比 0.74)。開放骨折集団では、手術部位感染はDuraPrep群の6.5%、CHG群の7.3%に発生した(オッズ比 0.86)。予定外再手術・1年転帰・重篤有害事象の頻度に群間差はなかった。
評価
この問題を検討しているグループの最新結果で、大規模RCTにより、閉鎖骨折整復手術ではDuraPrepが良いが、開放骨折整復では有意差はない、というエビデンスを提出した。同一プロトコルに従った著者らの2022年Lancet論文(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(22)01652-X)は、開放骨折で同等の結論を出していた。収束の方向に向かっているとみられるが、閉鎖骨折例での差異の有意性水準は高くない(p=0.049)。