前十字靭帯損傷後選手のカッティング動作における膝の生体力学
Knee Biomechanics During Cutting Maneuvers and Secondary ACL Injury Risk: A Prospective Cohort Study of Knee Biomechanics in 756 Female Elite Handball and Soccer Players
背景
前十字靭帯(ACL)損傷からスポーツに復帰したアスリートは、二次ACL損傷を負うリスクが高くなるが、ACL損傷はカッティング動作中に最も頻繁に発生する。
ノルウェーNorwegian School of Sport SciencesのMausehundらは、ハンドボールとサッカーのトップクラスの女子選手756名を対象に、サイドステップカッティング(side step cutting)動作中の膝の生体力学的パラメータが、ACL損傷歴のある選手とない選手の間で異なるかどうかを検討するコホート研究を行った。
参加者はすべて各スポーツ特有のカッティングタスクを行い、運動力学・生体力学データを得た。ACL損傷は、8年間の追跡期間に渡って前向記録した。
結論
ACL損傷から約4年後、損傷歴のある選手は、損傷歴のない選手と比較して、同側の最大膝外転モーメントが19%、最大膝屈曲モーメントが13%、最大膝内旋モーメントが33%低かった。これは、損傷後はカッティング動作中に同側の膝への負荷が少ない可能性を示している。反対側膝への負荷は損傷歴のない選手と同程度で、膝特有の生体力学的7変数は、いずれもACL損傷歴のある選手の将来の二次ACL損傷とは関連がなかった。
評価
ACL損傷歴のある選手はない選手と比較して、損傷発生が平均3.6年も前であるにもかかわらず、意図的または無意識に同側膝への負荷を軽減している、という結果である。同側膝の新たなACL損傷を回避しようとする行動だが、実際にはリスクが高まっている。