コロナ従来株対応ワクチンの「刷り込み」にはオミクロン株ワクチンの2回接種が有効か
Repeated Omicron exposures override ancestral SARS-CoV-2 immune imprinting

カテゴリー
Top Journal
ジャーナル名
Nature
年月
January 2024
625
開始ページ
148

背景

新型コロナウイルスSARS-CoV-2のパンデミックに対して、集団ワクチン接種戦略が効果を発揮しているが、従来株対応ワクチンの「免疫刷り込み(immune imprinting)」によって、オミクロン株対応ワクチンの効果が損なわれる可能性が指摘されている。
中国Peking UniversityのYisimayiらは、マウスモデルおよびオミクロン株ブレイクスルー感染を繰り返したヒトのコホートで、免疫刷り込みの動態と、オミクロン株対応ワクチンのブースター接種の役割を検討した。

結論

祖先株ワクチン(CoronaVac)を接種されたマウスに対し、各変異体スパイクタンパク質を投与すると、祖先株との抗原距離が増大するにつれ、中和抗体価(NT50)が低下した。さらに、XBB単回投与した場合と比して、CoronaVac後にXBB投与したマウスは、XBB株に対するNT50値が低かった。一方、2回目のスパイクタンパク質の投与を行うと、NT50値が大きく上昇した。
さらに、オミクロン株にブレイクスルー感染したヒトのコホートでも、1度のブレイクスルー感染後の中和抗体価は低く、反復感染したグループでは、オミクロン株に対する中和抗体価が有意に増加していた。受容体結合ドメイン(RBD)エピトープの解析では、オミクロン株への2回曝露により、祖先株抗体とは異なる特異的抗体を誘導することが明らかにされた。これにより免疫刷り込みは緩和され、1回曝露後の非中和エピトープへの偏りは解消された。

評価

祖先株への曝露により、オミクロン変異株に特異的な抗体が誘導されにくくなる、免疫刷り込み現象が確認された。一方で、オミクロン株への2回の曝露によって刷り込みは大きく軽減されており、オミクロン株への曝露歴のない個人では、複数回の対応ワクチン接種が有効であると考えられる。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(Top Journal)

The New England Journal of Medicine(NEJM)、The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Nature、Nature Medicine、Science、Science Translational Medicine、Cell