深部脳刺激による脳卒中後、2年以上経過した患者で上肢麻痺を改善
Cerebellar deep brain stimulation for chronic post-stroke motor rehabilitation: a phase I trial
背景
神経可塑性(neuroplasticity)は脳損傷からの回復の鍵を握る現象であるが、難治性疼痛やパーキンソン病・振戦などの治療法として発展してきた脳深部刺激(DBS)は、脳損傷後の神経可塑性を促進することができるか。
アメリカCleveland ClinicのBakerらは、中大脳動脈の虚血性脳卒中から生存し、1〜3年持続する上肢片麻痺(中等度から重度)を有する参加者(n=12)を登録し、病変対側の小脳歯状核へのリード埋め込み手術の後、初めは理学リハビリテーションのみ、次いでDBSとリハビリの併用を行い、安全性と実現可能性を検証する第1相臨床試験を実施した。
結論
患者の平均年齢は57.4歳、脳卒中から平均2.2年が経過していた。デバイスや治療に関連した重篤有害事象は発生しなかった。出血・感染症・周術期重大合併症は認められなかった。
Upper-Extremity Fugl-Meyer Assessment(FM-UE)は、リハビリのみ期間で中央値3ポイント、DBS・リハビリ併用期間ではさらに7ポイントの改善を示した。FM-UEのベネフィットは、長期フォローアップ後にも維持されていた。特に、ベースライン時点で遠位部運動機能が部分的に保持されていた参加者では、DBS・リハビリ併用期間で中央値15ポイントの改善が示された。
FDG PET/CT検査では、DBS・リハビリの前後で、病変周囲の皮質脳代謝の有意な増加が示された。
評価
理学療法に小脳歯状核DBSを併用することで、12名中9名で上肢の運動障害・運動機能の改善が認められた。参加患者は発症後1〜3年が経過していたが、経過期間にかかわらず改善が認められ、特に運動機能がある程度維持されいていた患者で恩恵が大きかった。
運動機能の改善はPETマーカーによっても裏付けられており、第2相以降の検証に期待がかかる。