開発途上国向け 結核の高感度・迅速診断キット 富士フイルム スイスの非営利組織「FIND」(*1)と共同開発契約締結
グローバルヘルス技術振興基金(*2)より、2億1,600万円の助成
- 富士フイルムメディカル株式会社
- 2016年3月31日
2016年3月31日
富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社(社長:中嶋 成博)は、スイスの非営利組織FIND(Foundation for Innovative New Diagnostics)と、銀塩増幅技術(*3)を応用したイムノクロマト法(*4)による結核の高感度・迅速診断キットに関する共同開発契約を締結しました。FINDは、開発途上国に適した感染症の新たな診断技術の開発と普及を目的とした活動を行っている組織です。今回当社とFINDは、簡便、迅速、安価で、高い診断能を有する開発途上国向けの結核迅速診断キットを開発します。本共同開発は、日本発の革新的な治療薬、ワクチン、診断薬の創出を目的とするグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)に採択されており、2億1,600万円の助成を受けます。開発期間は、平成28年4月から平成29年10月までの1年7か月を予定しています。
結核は、全世界で年間960万人が罹患し、150万人が死亡する(*5)世界3大感染症(*6)の一つです。なかでも、アフリカ地域や東南アジア地域など開発途上国の罹患者の割合は全体の86%に達しており(*7)、その伝播力と医療コストの大きさによって開発途上国の社会、経済活動に深刻な影響を与えています。また、結核と同様に、HIVも開発途上国に多くの感染者がいますが、HIVに感染すると、免疫力が低下するため、結核に罹患するリスクが健常者の約30倍も高くなると言われています。結核とHIVに重複感染した患者は重篤化しやすく、3人に1人が死亡しており、定期的な結核診断と早めの投薬治療が重要とされています。
開発途上国における結核診断には、患者の喀痰(かくたん)内の結核菌の有無を顕微鏡で観察する方法が広く用いられています。しかし、結核菌を見落してしまう場合や、結核菌によって肺以外の部位で発症する「肺外結核」の場合など、既存の方法では精度が高い診断結果が得られないことが課題となっています。近年では、高い診断能を持つ喀痰の遺伝子検査が徐々に普及し始めていますが、それでもなお専門技能を持つ検査者や高価な診断機器が必要です。また、開発途上国では、電源の確保が難しいことから、安定的な電源に依存しない、それぞれの地域により適した結核の診断方法の開発が強く求められています。さらに、喀痰が簡単に採取できない小児・老人の患者や、HIV感染者の多くが罹患する肺外結核の患者には、喀痰での検査自体が有効ではないため、これに替わる検体の活用が望まれています。
富士フイルムとFINDは、尿に排出される結核菌特有の成分「LAM(リポアラビノマンナン)」(*8)に着目。今回、FINDが提供する抗LAM抗体と、富士フイルムの銀塩増幅技術を応用したウイルス高感度検出技術を組み合せることで、電源が必要な機器を使わず、カートリッジに検体を滴下するだけで、簡単に結核菌の有無を判定できる開発途上国に最適なキットの開発を進めていきます。本キットは、主に結核が重症化しやすいHIV感染者を対象とした結核の1次診断ツールとしての開発・実用化を目指します。
富士フイルムは、高感度でインフルエンザウイルスを検出できる「超高感度イムノクロマト法インフルエンザ診断システム」を開発し、平成23年10月に国内で発売しました。本システムは、2種類の抗体を用いて検体のウイルスの有無を識別するもので、簡単な操作で3分半〜15分で判定結果を得ることができます。写真の現像プロセスで用いる銀塩増幅技術を応用することで、一般的な診断薬(*9)と比較して約100倍の高感度を実現。発症初期のわずかな量のインフルエンザウイルスでも検出を可能にした独自技術が高く評価され、医療機関に導入が進んでいます。また、インフルエンザ以外のアデノウイルスやRSウイルスなどへの応用も進んでいます。
富士フイルムは、社会課題の解決をメディカル事業の事業成長の機会と捉え、今後も研究開発を積極的に推進して事業展開を図るとともに、革新的な製品の提供を通じて世界の医療の発展と、人々の健康の維持増進に貢献していきます。
*1 スイスのジュネーブに本部を置く非営利組織。2003年に設立され、開発途上国における結核や、マラリア、エイズなどの感染症の診断ニーズに応える新技術の開発と普及のため、血液検体や診断試薬、情報の提供を通じて共同開発パートナーへの支援を行っている。FINDは世界保健機関(WHO)をはじめ、世界100か所を超える研究施設や保健機関、民間企業と協力関係にある。
*2 GHIT Fund (Global Health Innovative Technology)。日本政府と日本の製薬会社、ビル&メリンダ ゲイツ財団、国連開発計画(UNDP)の共同で設立された、開発途上国の感染症の制圧に向けた日本発の革新的な治療薬、ワクチン、診断薬の創出を目的とした官民パートナーシップ。
*3 写真の現像プロセスで用いる銀塩増幅技術をイムノクロマト法に応用し、採取した検体に含まれるウイルスの標識(金コロイド)を増幅してサイズを拡大し、目視能を大幅に向上させる富士フイルムの独自技術。
*4 試薬に滴下した検体(鼻腔ぬぐい液など)中に被検物質(ウイルスや細菌など)が存在すると、試薬中の標識抗体と結合して抗原抗体複合体が生成され、この複合体があらかじめ検出ライン上に線状に塗布された抗体に捕捉されると、陽性(抗原あり)を示す色付きのラインが表示される診断方式。簡便迅速に結果を得られることから、処置を急ぐ必要がある感染症の診断に多用されている。
*5 出典元:世界保健機構(WHO) Tuberculosis Factsheets (http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs104/en/)
*6 エイズ、結核、マラリア。
*7 出典元:世界保健機構(WHO) Global tuberculosis report 2015 (http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs104/en/)
*8 結核菌の細胞壁に存在し、結核菌の生存や病原性の発揮に必須とされ最も多く含まれる特徴的なリポグリカン(脂質を含む多糖)。
*9 体外診断薬の中で、採取した検体を用いてウイルスや細菌などの抗原を検出し、肉眼にて結果判定できる「迅速診断薬」を指す。イムノクロマト法によって季節性インフルエンザの抗原を検出する製品を中心に、病院やクリニックで広く用いられている。
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本件に関するお問い合わせは、下記にお願いいたします。
報道関係 コーポレートコミュニケーション部
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TEL 03-6418-2877
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