「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」
In-Flight Medical Events on Commercial Airline Flights
背景
現在、世界では年間のべ50億人が航空機を利用しており、比較的稀にしか発生しない機内での医療緊急イベントも増加している。機内医療イベントに関する調査は、限られた航空会社・地域を対象としたものがほとんどで、世界規模の実態は不明であった。
アメリカMedAire, IncのAlvesらは、2022年から2023年にかけて、世界の地上医療支援施設に報告された機内医療イベント77,790件、84の航空会社においてこれを経験した全ての乗客を対象として、機内医療イベントの疫学、および航空機のダイバート(目的地以外の空港等への着陸)、病院搬送、機内死亡率と関連する因子を調査した。
結論
医療イベントの発生率は、搭乗100万人あたり39件、フライト212回あたり1件、10億RPK(有償旅客キロ)あたり17件であった。患者の54.4%は女性で、年齢の中央値は43歳(四分位範囲27-61歳)であった。
航空機のダイバートは1.7%で発生し、その多くを神経学的疾患(41%)、心血管疾患(27%)が占めた。脳卒中疑い(調整オッズ比 20.35)、急性循環器緊急事態(8.16)はダイバートの因子であった。また、ボランティア医師の関与もダイバートのオッズを高めた(7.86)。
評価
これまでのもの(https://doi.org/10.1056/NEJMoa1212052)を大きく上回る7万件超のイベントの分析から、航空機内医療イベントの最新の実態を明らかにした。
医師が呼ばれているケースではダイバートの確率が上昇したが、これには重症度による交絡が考えられる他、機内で可能な医療行為の制限から防衛的な判断が行われやすい可能性もある。

