ガザ侵攻下における外傷パターン:最前線医療従事者からの報告
Patterns of war related trauma in Gaza during armed conflict: survey study of international healthcare workers
背景
2023年10月のパレスチナ・ガザ地区への軍事行動開始以降、イスラエル軍は難民キャンプを含む人口密集地域、医療・インフラ施設への継続的攻撃、援助物資の制限とが相まって壊滅的な人道状況を引き起こしている。今年1月の時点で同地区住民の3.0〜4.1%が死亡したと推定されている(https://doi.org/10.1101/2025.06.19.25329797)。
イギリスのEl-Tajiらは、2024年8月から2025年2月にかけて、パレスチナ・ガザ地区において、同地に派遣された国際医療従事者(n=78)を対象として、非政府組織の名簿、WhatsApp、メールグループを通じてデルファイ法による調査を行い、紛争中に観察された外傷の解剖学的領域、受傷機転、病状のデータを収集した。
結論
外傷に関連する損傷23,726件、武器に関連する損傷6,960件が報告された。
最も多かった外傷性損傷は火傷(18.3%)で、下肢の損傷(17.9%)、上肢の損傷(14.9%)が続いた。
武器関連損傷の大半は爆発による損傷であり(66.6%)、そのうち27.8%は頭部に発生した。一方で銃器による損傷は下肢に多く発生していた(22.6%)。
4,188名は慢性疾患により長期の治療を必要としていると報告された。
評価
ガザ地区の患者は火傷や爆風・破片による損傷を多く含み、頭部・四肢の受傷も多かった。紛争地帯での活動歴がある回答者は、ガザ地区でみられる外傷が過去の紛争よりも大規模かつ深刻であると報告しており、戦場向けの爆発性兵器が、人口密集地域で繰り返し使用されている実態を反映したものと思われる。
10月10日にアメリカ主導で行われた停戦合意後もイスラエルによる空爆と支援物質の制限は継続しているとされ、人道状況の改善がもたらされるかは依然として不透明である。

