小児期に成長ホルモン投与を受けたレシピエントでの医原性アルツハイマー病か?
Iatrogenic Alzheimer's disease in recipients of cadaveric pituitary-derived growth hormone

カテゴリー
Top Journal
ジャーナル名
Nature Medicine
年月
January 2024
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背景

かつて、成長ホルモン分泌不全症に対する治療として、死体の下垂体由来の成長ホルモン(c-hGH)が用いられていた時期がある。1985年に遺伝子組換え製剤に切り替えられるまでに、イギリスでは少なくとも1,848名がc-hGH投与を受けたが、この治療はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の原因となりうることが報告されており、さらに近年では、この医原性CJDの一部にアミロイドβ病変が付随することも報告されている(https://doi.org/10.1038/nature15369, https://doi.org/10.1038/s41586-018-0790-y)。
イギリスUCL Institute of Prion DiseasesのBanerjeeらは、同国のNational Prion Clinicに紹介された、c-hGH治療歴を有し、プリオン病発症またはCJDリスクを有する患者8名について報告した。

結論

8名中5名は若年性認知症の症状を有し、全員がアルツハイマー(AD)型認知症(DSM-5)の基準を満たした。残り3名のうち、1名は軽度認知障害の基準を満たし、1名は主観的な認知症状のみ、1名は無症状であった。有症状者の潜伏期間は30〜40年であった。
AD型認知症の基準を満たした5名では、バイオマーカーやCT・MRI、脳脊髄液などによって、診断と一致する結果が得られた。また、軽度認知障害のあった患者では、死後に広範なアミロイドβの沈着が認められ、無症状の患者もAT(N)分類のAD基準を満たした。神経変性疾患に関連する病的バリアントは、サンプルが入手可能であった5名全員で陰性であった。

評価

孤発性でも遺伝性でもない、医原性に伝播した可能性が高いADを世界で初めて報告した。c-hGHが原因となる症例が今後生じる可能性はないとみられるが、外科的な伝播やヒト由来の生物学的製剤による伝播の可能性が存在しないのかは、今後究明される必要がある。ADの病因論・病態形成論でも重要な現象である。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(Top Journal)

The New England Journal of Medicine(NEJM)、The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Nature、Nature Medicine、Science、Science Translational Medicine、Cell