新型コロナウイルスは冠動脈プラークに感染し炎症を引き起こす
SARS-CoV-2 infection triggers pro-atherogenic inflammatory responses in human coronary vessels

カテゴリー
循環器
ジャーナル名
Nature Cardiovascular Research
年月
October 2023
2
開始ページ
899

背景

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によるCOVID-19は、急性期症状が解消された後もさまざまな後遺症を残す。その中には、心筋梗塞・脳卒中などの心血管疾患のリスク上昇も含まれるが、SARS-CoV-2の感染が動脈において、どのように作用するかは未知であった。
アメリカNew York UniversityのEberhardtらは、2020/5〜2021/5にCOVID-19と診断された患者8名から得られた冠動脈剖検標本(n=27)を分析し、冠動脈でのSARS-CoV-2ウイルスの存在とマクロファージへの指向性を検証し、さらにマクロファージ内での複製とその影響を評価した。

結論

冠動脈疾患のある患者(平均69.6歳)からの剖検標本からは、SARS-CoV-2ウイルスのRNAが検出され、特に病理学的内膜肥厚(PIT)の冠動脈壁では、周囲の脂肪よりもウイルス複製が活発であることが示唆された。マクロファージはSARS-CoV-2に感染しており、さらにその中でも泡沫細胞は感染感受性が高かった。
SARS-CoV-2感染は、培養マクロファージとアテローム性冠動脈の外植体の双方で、炎症性サイトカイン・動脈硬化サイトカインの分泌を伴う強い炎症反応を引き起こした。遺伝子発現解析から、NRP1を発現するマクロファージが冠動脈病変で認められ、NRP1がSARS-CoV-2感染感受性を高めた。

評価

SARS-CoV-2は多様な臓器に感染することが知られるが、この研究は、少数例ではあるが、冠動脈への感染を実定した。最近のメタアナリシスには、COVID-19患者の半数が冠動脈疾患保有者であった、とするものもあり(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10205132/)、分子機構の解明は重要である。

関連するメディカルオンライン文献

大規模臨床試験、新規の薬・機器・手法・因子・メカニズムの発見に関する文献を主に取り上げ、原文の要約と専属医師のコメントを掲載。

(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(循環器)

Journal of the American College of Cardiology(JACC)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、American Heart Journal (AHJ)、Circulation、The Journal of the American Medical Association(JAMA)