高感度トロポニンはPE患者のリスクを過大評価する?
High-Sensitivity vs Conventional Troponin Cutoffs for Risk Stratification in Patients With Acute Pulmonary Embolism
背景
心筋トロポニン検査は、肺塞栓症(PE)における長期リスクの層別化ツールとして有用である。では、低濃度域の評価に優れた高感度トロポニン検査は、PEのリスク予測において従来のトロポニン検査を上回る価値があるのか?
アメリカHarvard Medical SchoolのBikdeliらは、スペイン12病院の救急外来患者(n=848)を登録したCT検査に関する前向コホート研究PROTECTで事後解析を行い、血行動態の安定したPE患者における診断時の従来トロポニンI検査(cTnI, 閾値 0.05 ng/mL)と高感度トロポニンI(hsTnI, 0.029 ng/mL)と合併症(30日以内の血行動態破綻・PE再発・全原因死亡)の関連を検討した。
結論
834名でcTnI値・hsTnI値が利用可能であった。cTnI値の上昇は16.7%、hsTnI値の上昇は31.7%で認められ、合併症は全体の7.4%で発生した。
cTnI値の上昇は、合併症のオッズ増加と関連したが(オッズ比2.84)、hsTnI値の上昇は関連しなかった(1.12)。
hsTnI値でのみ上昇が認められた患者(n=125)での合併症は0件であった。また、欧州心臓病学会(ESC)2019のリスク層別化スキームにおいても、hsTnI値でのみ非低リスクとされた患者(n=78)での合併症は0件であった。
評価
急性冠症候群では超急性期診断での有用性を認められている高感度トロポニンであるが、PEのリスク層別化においては従来トロポニンへの付加的価値が見られなかった。
高感度トロポニン検査を検証する前向研究が求められる。


