外傷性凝固障害へのトラネキサム酸、先進国患者での有効性は?:PATCH-Trauma
Prehospital Tranexamic Acid for Severe Trauma
背景
外傷後の急性期患者に対するトラネキサム酸は、大規模RCT、CRASH-2でベネフィットを示し、欧米のガイドラインで推奨されるに至ったが、同試験および後続のCRASH-3は発展途上国の登録患者が多く、先進国の医療システムにおける妥当性には議論があった。
オーストラリアAustralian National UniversityのGruenら(PATCH-Trauma)は、オーストラリア・ニュージーランド・ドイツの15施設で外傷性凝固障害リスクのある成人の重度外傷患者を登録し、トラネキサム酸(病院到着前に1 gボーラス、病院到着後の8時間で1 g)またはプラセボへと割り付けるRCTを実施した(n=1,310)。
結論
一次アウトカムである6ヵ月時点でのGlasgow Outcome Scale-Extended(GOS-E)5以上の機能的良好アウトカム率は、トラネキサム酸群53.7%、プラセボ群53.5%と差がなかった。受傷28日以内の死亡率はトラネキサム酸群17.3%、プラセボ群21.8%であり、トラネキサム酸群で低かった(RR 0.79)。ただし、6ヵ月死亡率は各群19.0%、22.9%で有意差はなかった。血管閉塞イベントを含め、重篤有害事象に群間差はなかった。
評価
一次アウトカムには差がなかったものの、死亡率についてはトラネキサム酸に有利な傾向が認められた。とはいえ、本試験の結果が、トラネキサム酸をめぐる論争を終結させることはないだろう。