埋め込み型超音波デバイスで血液脳関門を超えて抗がん剤を送る
Repeated blood-brain barrier opening with an implantable ultrasound device for delivery of albumin-bound paclitaxel in patients with recurrent glioblastoma: a phase 1 trial
背景
血液脳関門の存在は脳腫瘍に対する薬物治療の重大な制限となっており、これを克服するための様々な方法が考案・検討されてきた。
アメリカNorthwestern UniversityのSonabendらは、腫瘍径70 mm以下でKPSが70以上の再発膠芽腫成人患者において、腫瘍切除後に9つのエミッターを持つ超音波デバイスを埋め込み、低出力パルス超音波(LIPUS)+マイクロバブル(MB)静脈内投与と6通りの用量でのアルブミン結合型パクリタキセル投与を行い、用量制限毒性とその他の安全性を評価する第1相用量漸増試験を実施した(n=17)。
結論
用量レベル40-215 mg/m2の5段階で1名ずつ、最大用量レベル260 mg/m2で12名が治療を受けた。LIPUS-MBによる血液脳関門の開放は総計68サイクル実施された。最大用量レベルの1名で1サイクル目にグレード3脳症(用量制限毒性)が発生し、もう1人でも2サイクル目にグレード2脳症が発生し、用量の引き下げが行われた。LIPUS-MBに伴う進行神経障害はなかったが、グレード1-2の即時・一過性頭痛が12名(71%)で発生した。グレード3-4の治療下発現有害事象として好中球減少症(47%)、白血球減少症(29%)、高血圧症(29%)があり、治療関連死亡はなかった。LIPUS-MBは血液脳関門の開放をもたらし、nab-パクリタキセルの濃度を上昇させた(0.037 μM vs. 0.139 μM)。同種試験のカルボプラチンでも同様の濃度上昇が認められた(0.991 μM vs. 5.878 μM)。
評価
埋め込みデバイスを用いたLIPUS-MBにより血液脳関門を開放し、パクリタキセルなどの、テモゾロミドよりも強力だが通常は血液脳関門を通過しない化学療法剤を送達しうることを実証した。現在第2相試験が進行中であり(NCT04528680)、生存アウトカムへの効果が注目される。


