胸痛患者のX線トリアージをディープラーニングが改善する
Deep Learning Analysis of Chest Radiographs to Triage Patients with Acute Chest Pain Syndrome
背景
救急受診した胸痛患者では胸部X線検査を含めた疾患鑑別が行われるが、重大な疾患が存在するにもかかわらず、陰性となるケースもある。
アメリカMassachusetts General HospitalのKolossvaryらは、2005〜2015年に同施設で胸部X線検査に加えて、心血管・呼吸器画像検査またはストレステストを受けた急性冠症候群(ACS)患者のデータを用い(n=23,005)、30日以内のACS・肺塞栓症(PE)・大動脈解離(AD)・死亡を予測するディープラーニングモデルを構築し、同施設(n=5,750)およびBrigham and Women’s Hospital(n=22,764)のデータを用いて検証した。
結論
MGHテストセットでは、30日複合エンドポイントについての受信者動作特性曲線下面積(AUC)が、年齢+性別(モデル1)で0.62、モデル1+トロポニン/D-dimer(モデル2)で0.76であったのに対し、モデル2+ディープラーニング(モデル3)では0.85と有意に識別を改善した。感度閾値を99%とした場合、モデル2で追加の検査を延期可能とされたのは2%に過ぎなかったが、モデル3では14%が延期可能となった。BWHでの外部検証でも同様の傾向がみられ、微調整後に改善した。
評価
胸部X線を用いて、従来の臨床マーカーのみの場合よりも高精度で重大アウトカムを予測し得た。ただちに検査が必要な患者を絞り込むことができれば、リソースの逼迫した救急環境にとって恩恵となる。