切除可能境界膵がんでの術前化学療法は生存率を改善：ESPAC-5試験
Immediate surgery compared with short-course neoadjuvant gemcitabine plus capecitabine, FOLFIRINOX, or chemoradiotherapy in patients with borderline resectable pancreatic cancer (ESPAC5): a four-arm, multicentre, randomised, phase 2 trial
背景
切除可能境界（borderline resectable: BR）膵がんは、膵切除を行っても遺残する可能性があり、術後補助化学療法にもかかわらず生存率は低い。この状況を打開するアプローチとして検討されてきたのが術前補助療法である。
イギリスUniversity of LiverpoolのGhanehらは、イギリス・ドイツの16施設でCTによりBRと判定された膵管腺がん患者を、即時手術またはゲムシタビン＋カペシタビン、FOLFIRINOX、カペシタビンベースの化学放射線治療による術前補助治療の計4群へと割り付けるランダム化比較試験ESPAC5（旧ESPAC-5f）試験を実施した（n=90）。
結論
術前補助治療群へと割り付けられた患者の80%で、術前治療が完了した。一年当たりの患者登録数（一次アウトカム）は25.92名であった。即時手術群の68%、術前治療群の55%で膵切除が行われ（もう一つの一次アウトカム）、R0切除はこのうち14%、23%で達成された。1年生存率は即時手術群で39%、ゲムシタビン＋カペシタビン群78%、FOLFIRINOX群84%、化学放射線治療群60%であった。1年無病生存率は即時手術群で33%、術前治療群では59%であった（ハザード比 0.53）。グレード3以上の有害事象は即時手術群の7%、術前治療群の34%で報告された。
評価
BR膵がんにおいて複数の術前補助治療を比較する初のRCTであり、術前の化学療法は、切除率を悪化させることなく、生存率を改善した。PREOPANC試験やPrep-02/JSAP-05試験と合わせて、術前補助化学療法を支持するエビデンスとなる。
