重症患者の人工呼吸管理、SpO2目標値でアウトカムに差はない:PILOT試験
Oxygen-Saturation Targets for Critically Ill Adults Receiving Mechanical Ventilation
背景
侵襲的人工換気を受ける患者での至適な酸素飽和度レベルは?
アメリカVanderbilt University Medical CenterのSemlerらは、救急および内科系ICUで人工呼吸を受ける成人患者を、パルスオキシメーターによる3つの酸素飽和度目標値(SpO2)、88〜92%(90%群)・92〜96%(94%群)・96〜100%(98%群)へと割り付けるクラスターランダム化実臨床型比較試験PILOTを実施した(n=2,541)。
結論
各群の人工呼吸器不要日数(中央値)は、90%群で20日、94%で21日、98%で21日であり、28日院内死亡率は各34.8%・34.0%・33.2%であった。心停止・不整脈・心筋梗塞・脳卒中・気胸の発生率も3群で同程度であった。
評価
数多くのランダム化比較試験が行われ、本試験の後も大規模試験が控えている重要テーマであるが、このPILOT試験では、幅広いSpO2目標値のいずれであってもアウトカムに差はなかった。極端な低酸素・高酸素を回避できていれば用は足りると言えそうだが、ARDSや敗血症など個々の疾患については、別の検証を必要とする。