COVID-19重症患者へのfull doseの抗凝固療法は有益か?:COVID-PACT試験
Anticoagulation and Antiplatelet Therapy for Prevention of Venous and Arterial Thrombotic Events in Critically Ill Patients with COVID-19: COVID-PACT
背景
新型コロナウイルス感染症COVID-19では血栓のリスクが増大するため、重症患者では抗凝固療法が有効とされているが、至適用量については不明なままである。
アメリカHarvard Medical SchoolのBohulaらは、ICUレベルのCOVID-19患者を対象に、完全用量の抗凝固療法または標準用量の予防的抗凝固療法を割り付け、さらに抗血小板療法の適応がない患者にクロピドグレルの有無を割り付ける2×2要因、オープンラベルランダム化比較試験COVID-PACTを実施した(n=390)。
結論
一次有効性アウトカムの階層的勝率(win)は、完全用量群で12.3%、標準用量群で6.4%であった(勝率比 1.95)。この結果はtime-to-event解析においても一貫していた。一次安全性アウトカム(致死的または生命を脅かす出血)は、完全用量群の2.1%、標準用量群の0.5%で発生した。全原因死亡に群間差はなかった(ハザード比 0.91)。また、クロピドグレルの有無による有効性・安全性の差は認められなかった。
評価
REMAP-CAP、ACTIV-4a、ATTACC試験では、治療用量ヘパリンの効果は非重症患者でのみ認められていた(https://doi.org/10.1056/NEJMoa2105911, https://doi.org/10.1056/NEJMoa2103417)。このCOVID-PACT試験では、完全用量の抗凝固療法により、血栓合併症は抑制されたものの、出血も増加し、全体の死亡率に差は認められなかった。