黒人はがんの臨床試験からどのように遠ざけられるのか
Eligibility Criteria Perpetuate Disparities in Enrollment and Participation of Black Patients in Pancreatic Cancer Clinical Trials
背景
アメリカではがん臨床試験への参加に人種間差がある(非白人患者の参加が少ない)ことが認識されてきており、社会正義の観点だけでなく、試験の生物学的妥当性の観点からも大きな問題とみなされている。
University of Florida College of MedicineのRinerらは、2010〜19年にVirginia Commonwealth University Healthでケアを受けた膵管腺がん(PDAC)患者の臨床データと、ClinicalTrials.govから得られた従来の臨床試験の適格基準をもとに、 PDACの試験参加候補者の人種格差に試験の適格規準がもたらす影響を評価した(n=676)。
結論
42.5%が黒人、51.6%が白人であった。従来の適格規準のもとでは黒人の42.4%、白人の33.2%が不適格とみなされた。低アルブミン血症・HIV・C型肝炎・B型肝炎による不適格は黒人の方が多く、腎機能障害・最近の冠動脈ステント留置・コントロールされていない糖尿病による不適格も多い傾向があった。HIV・C型肝炎・B型肝炎・糖尿病・がん既往歴・ステント留置等、コントロール・管理可能な併存症を除いた新たな適格規準により、黒人と白人の除外率は同程度となった(26.8% vs. 24.8%)。
評価
過去数年、アメリカの医療システム・実践に潜む構造的人種差別は集中的な研究のテーマとなっている。本研究は膵がん臨床試験におけるunderrepresentation問題に焦点を当て、試験の登録基準が黒人患者の除外につながっている可能性を示唆した。アジア人、ヒスパニック系では人口と臨床試験参加率との格差がより大きいとするデータもあり(https://doi.org/10.1001/jama.2021.16680)、この集団でも検証が必要だろう。

