高齢脳卒中患者の待機手術はどこまで待機すべきか :ビッグデータでリスクを定量化
Association of Time Elapsed Since Ischemic Stroke With Risk of Recurrent Stroke in Older Patients Undergoing Elective Nonneurologic, Noncardiac Surgery
背景
米心臓協会/脳卒中協会 (AHA/ASA)は、虚血性脳卒中後待機手術までの期間として6ヵ月以上を推奨している。
RAND HealthのGlanceらは、2011〜2018年の同国非心臓・非神経選択的手術を受けたメディケア受益者(n=5,841,539)のデータに基づくコホート研究を行った。一次アウトカムは、手術後30日以内の脳卒中またはそれによる再入院、術後30日間の全死因死亡・脳卒中とその複合、および退院後のナーシングホームまたは高度看護施設への入所である。
結論
手術前30日以内に脳卒中既往がある患者は無既往患者と比較して、周術期脳卒中の調整オッズが高かった(AOR, 8.02)。脳卒中既往と手術の間隔が 61〜90日の場合(AOR, 5.01) は、181〜360日の場合(AOR, 4.76) と比較して、オッズに有意差はなかった。30日全死因死亡のオッズは、脳卒中既往から30日以内に手術を受けた患者で高く(AOR, 2.51)、61〜90日で1.49に低減したものの、360日以上間を置いても有意には低下しなかった。
評価
最大のビッグデータにより、重要な問題に定量的視点を確立した。脳卒中後30日以内の周術期脳卒中リスクの高さは衝撃的だが、一方、著者らの結論は、リスクは高いものの90日以上経過するとプラトー化するので、「6ヵ月以上待て」という推奨は「保守的すぎるかもしれない」というものである。