ACE2発現低下に関連するがん治療薬がコロナ感染のリスクを下げる?
Association of Antineoplastic Therapy With Decreased SARS-CoV-2 Infection Rates in Patients With Cancer
背景
新型コロナウイルスSARS-CoV-2の感染メカニズムにおいて細胞表面のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)が重要な役割を担っていることから、ACE阻害薬などの影響が検証されてきた。Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのFooteらは、Library of Integrated Network-Based Cellular Signaturesデータベースを用いてACE2遺伝子発現の低下と関連する抗悪性腫瘍化合物をを同定し、COVID-19パンデミック時にがんセンターで治療を受けていた患者の後向コホート(n=1,701)において、ACE2発現低下作用を有する抗悪性腫瘍薬とSARS-CoV-2感染との関連を調査した。
結論
In silico解析により、ACE2のダウンレギュレーションと関連する91の化合物が同定された。これらのうちエベロリムスなどのmTOR/PI3K阻害薬、ゲムシタビンなどの代謝拮抗薬を含む8つの薬剤による治療が、患者コホートの12.6%で行われていた。他の治療薬を使用した患者におけるSARS-CoV-2陽性率は12.9%であったのに対し、ACE2発現低下作用のある薬剤の投与を受けた患者では7.0%であった(オッズ比0.53)。結果は感度解析でも確認された。また、ゲムシタビンは単独でSARS-CoV-2感染の低下と関連していた(0.42)。
評価
ACE2のダウンレギュレーションをもたらすがん治療薬が、コロナ感染を抑制する可能性を示した。これらの薬剤で治療を受ける患者にささやかな安心をもたらすだけでなく、新たな抗ウイルス薬のデザインにも示唆を与える知見である。


