心筋梗塞が乳がんを促進する?
Myocardial infarction accelerates breast cancer via innate immune reprogramming
背景
乳がん患者では治療毒性やライフスタイルの変化により心血管リスクが増大するが、心血管イベントが乳がんに与える影響はどのようなものだろうか。New York UniversityのKoelwynらは、同種同系マウス乳がんモデルを用いて、心筋梗塞が乳がん病理学に与える影響を調査し、さらに早期乳がん患者の前向ケースコホート2件での後向解析によりこれらの関連を検討した。
結論
心筋梗塞は、乳がんモデルマウスの骨髄レザボアにおいてLy6C high単球を免疫抑制的表現型にリプログラミングし、これは単球の転写レベルでも維持された。さらに心筋梗塞は、循環血中Ly6C high単球レベルと腫瘍への動員を増大させ、これらを枯渇させると心筋梗塞誘発性の腫瘍増殖も抑制された。また前向コホート研究の解析(n=1,724)では、乳がん診断後の心血管イベントは再発リスクの59%増加、乳がん特異的死亡の60%増加と関連した。
評価
乳がん診断後の心血管イベントが再発・死亡リスクであることを明らかにし、さらに外科的に心筋梗塞を作り出したマウスにおける前臨床研究は、免疫細胞リプログラミングがこの関連を駆動している可能性を示唆した。乳がん以外にも拡張しうる注目すべき仮説生成的研究である。


