腎障害患者ではトロポニン値が上昇する
Use of High-Sensitivity Cardiac Troponin in Patients With Kidney Impairment: A Randomized Clinical Trial
背景
心筋トロポニン検査は心筋梗塞の診断に不可欠だが、その値はさまざまな原因により上昇する。スコットランドUniversity of EdinburghのGallacherらは、急性冠症候群が疑われる患者(n=46,927)での高感度心筋トロポニンI(hs-cTnI)検査の使用を評価するステップウェッジ・クラスターランダム化臨床試験High-STEACSにおいて、腎機能障害(eGFR <60 mL/min/1.73 m2)患者のトロポニン値および心筋梗塞・心血管死亡アウトカムを評価する事前指定二次解析を行った。
結論
患者全体の22%でhs-cTnI濃度の上昇が見られ、うち42%が腎障害を有した。hs-cTnI上昇患者の割合は、eGFRが90以上の患者では10%に過ぎなかったが、30未満になると66%まで上昇した。一方で、診断に占めるタイプ1心筋梗塞患者の割合は、74%から35%に低下した。従来のcTnI測定からhs-cTnI検査への切り替えで、腎障害を有する患者でのトロポニン上昇は37%から47%に、腎障害を有さない患者でのトロポニン上昇は13%から16%へと増加した。hs-cTnI検査への切り替えで高リスク患者がより多く特定されるようになったが、1年以内のタイプ1または4心筋梗塞および心血管死亡率は変化がなかった。
評価
腎機能障害の程度が強い患者ほどトロポニン上昇が多かったが、古典的心筋梗塞の割合は低下した。こうした数値上昇をどう解釈し、管理するのか明確な指針が求められている。