無重力の宇宙で心停止が発生したらどうやって心マッサージをするのか
Cardiopulmonary resuscitation (CPR) during spaceflight - a guideline for CPR in microgravity from the German Society of Aerospace Medicine (DGLRM) and the European Society of Aerospace Medicine Space Medicine Group (ESAM-SMG)
背景
宇宙開発事業は相次ぐ民間企業の参入などもあり活況を呈しているが、宇宙空間で医療緊急事態が発生したときの対処についてはガイドラインが整備されていない。ドイツGerman Society of Aviation and Space Medicine(DGLRM)のHinkelbeinらは、無重力(microgravity)下での心停止・心肺蘇生法に関して利用可能なエビデンスをレビュー・分析し、専門家のオピニオン・コンセンサスと合わせてガイドラインを策定した。
結論
465報の文献が得られ、うち88報が全文評価された。地上のガイドラインと同様に、一次救命処置(BLS)と二次救命処置(ALS)の二段階のアプローチが推奨された。無重力下での胸骨圧迫法については5つの技法が存在しており、BLSにおいては患者に馬乗りになり足でホールドしながら行うEvetts-Russomano法を、患者がCrew Medical Restraint Systemに固定されているALSシナリオにおいては、反対側の壁を足場にして行う逆立ち法を利用することが推奨された。気道管理は二人以上の救助者がおり患者が固定されている場合にのみ行われるべきで、気管挿管の訓練を受けていない救助者の場合は、声門上器具を使用することが推奨された。
評価
これまでのところ宇宙空間で心肺蘇生を必要とする医療事象は発生したことがないが、宇宙開発の再加熱により、現実性のある問題となっていた。このガイドラインは既存研究に基づく推奨を示すだけでなく、将来の研究課題にもフレームワークを提供する。


