重症TBIでの病院前トラネキサム酸、観察研究ではアウトカム悪化と関連
Association Between Prehospital Tranexamic Acid Administration and Outcomes of Severe Traumatic Brain Injury
背景
トラネキサム酸は外傷性出血患者の死亡を抑制すると考えられているが、外傷性脳損傷(TBI)患者でのベネフィットに関してはエビデンスが一貫していない。オランダVrije Universiteit AmsterdamのBossersらは、同国のBRAIN-PROTECT研究の観察データから、重症TBI患者における病院前治療中のトラネキサム酸投与と30日死亡率の関連を検討した(n=1,827)。
結論
調整を行わない解析では、病院前トラネキサム酸投与は、30日死亡率の増加と関連した(オッズ比1.34)。交絡因子を調整すると、トラネキサム酸投与と死亡率の間に関連は存在しなかったが、重症単独性TBIにおいてはなおトラネキサム酸投与患者で大きな死亡増が認められた(4.49)。
評価
トラネキサム酸は早期投与ほど有効とされ病院前投与も検証されてきたが、この観察研究では意外にも有害な可能性が示唆された。CRASH-3試験ではトラネキサム酸の利益は軽度・中等度TBIに限定されており(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(19)32233-0)、最近の別RCTの無効結果も合わせて考えれば(http://doi.org/10.1001/jama.2020.8958)、重症TBIでは他の介入を優先すべきかもしれない。


