急性冠症候群疑いでのトロポニン0/1時間プロトコルは安全か:RAPID-TnT試験
A Randomized Trial of a 1-Hour Troponin T Protocol in Suspected Acute Coronary Syndromes: The Rapid Assessment of Possible Acute Coronary Syndrome in the Emergency Department With High-Sensitivity Troponin T Study (RAPID-TnT)
背景
高感度心筋(hs-cTn)トロポニン検査は心筋梗塞を早期に検出可能であるが、実践レベルでのランダム化比較試験においてその利益と害が検証されたことはない。オーストラリアFlinders University of South AustraliaのChewらは、救急の急性冠症候群疑い患者において、0/1時間hs-cTnTプロトコルの、0/3時間プロトコルに対する非劣性性を検証する多施設ランダム化比較試験RAPID-TnTを実施した(n=3,378)。
結論
0/11時間プロトコル群の患者は、救急から帰宅する割合が高く(45.1% vs. 32.3%)、救急滞在時間も短かった(4.6時間 vs. 5.6時間)。また1時間プロトコル群では心機能検査も少なかった(7.5% vs. 11.0%)。30日死亡・心筋梗塞発生率はそれぞれ1.0%、1.0%で(率比1.06)、0/1時間プロトコルは、0/3時間プロトコルに劣らなかった。ただし、0/1時間プロトコル群で心筋障害の増加が見られた。0/1時間プロトコルの陰性適中率は99.6%であった。
評価
心血管イベントによる再入院や心筋障害が多かったものの、0/1時間プロトコルはおおむね安全と考えられた。現行ガイドラインの推奨を裏付け、ACS疑い患者での救急スループット改善に資する結果である。