挿管中の輪状軟骨圧迫法は無益:IRISランダム化比較試験
Effect of Cricoid Pressure Compared With a Sham Procedure in the Rapid Sequence Induction of Anesthesia: The IRIS Randomized Clinical Trial
背景
緊急挿管時には、胃内容物の逆流を防ぐため輪状軟骨圧迫(セリック手技)が用いられることがあるが、有効性に関するエビデンスは乏しい。フランスHopital Pitie-SalpetriereのBirenbaumらは、10の教育医療センターで迅速導入挿管(RSI)を受ける患者において、輪状軟骨圧迫下での挿管またはそのsham治療(圧迫するフリ)を割り付けるランダム化非劣性試験IRISを実施した(n=3,472)。
結論
誤嚥はセリック手技群の0.6%、sham治療群の0.5%であり、相対リスク上限(2.00)は事前指定された非劣性上限を上回った。二次アウトカム(肺炎・滞在日数・死亡率)にも群間差はなかった。一方で、セリック手技群では喉頭視野不良(Cormack-Lehaneグレード3・4)が多く(10% vs. 5%)、長時間を要する挿管も多かった(47% vs. 40%)。
評価
このテーマについて待たれていた大規模RCT結果である。誤嚥発生率が事前の予想より低かったこともあり、圧迫なし挿管の非劣性を示すことはできなかったが、喉頭視野や挿管時間の結果からはセリック手技により挿管困難が増大する可能性も示唆された。