挿管中の輪状軟骨圧迫法は無益:IRISランダム化比較試験
Effect of Cricoid Pressure Compared With a Sham Procedure in the Rapid Sequence Induction of Anesthesia: The IRIS Randomized Clinical Trial

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
JAMA Surgery
年月
October 2018
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開始ページ
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背景

緊急挿管時には、胃内容物の逆流を防ぐため輪状軟骨圧迫(セリック手技)が用いられることがあるが、有効性に関するエビデンスは乏しい。フランスHopital Pitie-SalpetriereのBirenbaumらは、10の教育医療センターで迅速導入挿管(RSI)を受ける患者において、輪状軟骨圧迫下での挿管またはそのsham治療(圧迫するフリ)を割り付けるランダム化非劣性試験IRISを実施した(n=3,472)。

結論

誤嚥はセリック手技群の0.6%、sham治療群の0.5%であり、相対リスク上限(2.00)は事前指定された非劣性上限を上回った。二次アウトカム(肺炎・滞在日数・死亡率)にも群間差はなかった。一方で、セリック手技群では喉頭視野不良(Cormack-Lehaneグレード3・4)が多く(10% vs. 5%)、長時間を要する挿管も多かった(47% vs. 40%)。

評価

このテーマについて待たれていた大規模RCT結果である。誤嚥発生率が事前の予想より低かったこともあり、圧迫なし挿管の非劣性を示すことはできなかったが、喉頭視野や挿管時間の結果からはセリック手技により挿管困難が増大する可能性も示唆された。

関連するメディカルオンライン文献

大規模臨床試験、新規の薬・機器・手法・因子・メカニズムの発見に関する文献を主に取り上げ、原文の要約と専属医師のコメントを掲載。

(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)