救急搬送の受け入れ拒否はどんな時に起こるのか:アメリカ調査
Do Hospitals Turn Away Ambulances Only When Busy, or When Their Peers Do?
背景
アメリカでは、救急外来が混雑によって新たな患者を受け入れる能力がない場合に、救急医療サービスに対して「受け入れの困難と他施設への搬送の要請(diversion status)」を宣言する、ambulance diversionと呼ばれる仕組みが一般化している。既存研究では、近郊施設がdiversion statusを宣言している場合、diversion statusが宣言されやすい傾向が示唆されている。
アメリカWashington University in St. LouisのLinらは、2015年から2020年における、カリフォルニア州サンフランシスコのすべての救急受け入れ病院9施設を対象とした後向観察研究を行い、diversionを宣言している他施設の数がdiversion宣言に与える影響を評価した。
モデルでは病院固定効果に加え、救急車による搬送患者数、独歩受診患者数、入院患者数、時間が調整された。
結論
1,885日の期間中、9施設の病院では1日平均27件の救急搬送があり、diversionは1病院あたり平均1.3回宣言された。
Diversionの宣言後には、宣言した病院への救急搬送が減少し、他院への搬送が増加した。Diversionによる地域全体の搬送時間延長は1分未満であった。
共変量を調整後も、他施設のdiversion数が増えるほど自施設のdiversion宣言は増加しており、diversion数が1施設の場合のハザード比は1.18、2施設で1.29、3施設で1.62であった。全diversionイベントの28%は、他施設のdiversionに関連すると推定された。
評価
各施設のdiversionの連鎖が、地域全体の救急需要による混雑の連鎖なのか、それとも近郊施設の宣言への防衛的反応なのかはこれまで明らかにされてこなかったが、本研究は患者負荷の増大だけでは説明できないdiversion宣言の増加があることを明らかにした。
アメリカ独特のシステムゆえ、他国の救急システムにそのまま外挿することはできないが、「各病院にとって合理的な受入れ制限が、他施設の行動を介して地域全体の搬送困難を増幅し得る」という示唆は重要だろう。


