バソプレシンの投与タイミングを早めても敗血症性ショックの死亡率は改善しない:VASSPR試験
Effect of Vasopressin Initiation Threshold on Septic Shock Mortality: The VASSPR Cluster Crossover Randomized Strategy Trial
背景
敗血症性ショック患者での第一選択昇圧薬はノルアドレナリンであり、第一選択薬で血圧が維持できない場合にバソプレシンの追加使用が弱く推奨されている。ランダム化試験のサブグループ解析や観察研究は、ノルアドレナリン投与がより少ない段階でバソプレシンを追加することで良好なアウトカムが実現できる可能性を示唆しているが、至適な追加のタイミングは?
アメリカIntermountain Medical CenterのPeltanらは、2024年2月から2025年7月にアイダホ州・ユタ州で敗血症性ショックに対して昇圧薬の投与を受けた成人患者を対象とするクラスターランダム化・クロスオーバー臨床試験を行い、ノルアドレナリン換算量0.1 μg/kg/分(低閾値戦略)または0.4 μg/kg/分(高閾値戦略)でのバソプレシン開始による28日死亡率・その他のアウトカムへの影響を評価した。
結論
3,959名の患者が登録された。割り付け戦略の影響を受ける可能性が高い患者(昇圧薬投与量がノルアドレナリン換算0.07 μg/kg/分以上)では、低閾値群の68.0%、高閾値群の42.7%がバソプレシン投与を受けた。バソプレシン開始前に投与された昇圧薬は低閾値群で中央値0.14 μg/kg/分、高閾値群で0.34 μg/kg/分であった。
28日死亡率は低閾値群で31.8%、高閾値群で33.0%と差がなかった(調整済み周辺オッズ比 0.98)。28日目までの腎代替療法不要日数は両群とも中央値29日であった。
評価
観察研究などで有益性が示唆されていたにもかかわらず、本研究の早期バソプレシン追加戦略は、死亡率の改善につながらなかった。
これまでのエビデンスは考慮されていない交絡によるものだった可能性があるが、一方で至適なタイミングが患者ごとに異なる可能性も考えられる。現在、ブラジルのNoVa試験(NCT06464510)などが進行中であり、それらの結果は重要となるだろう。


