市民マラソン中の心停止、ラストスパートがリスクに?
Characteristics of sudden cardiac arrest during endurance racing: a decade of the Paris registry
背景
市民マラソン中の突然心停止(SCA)に関しては近年データの蓄積が進んでおり、生存率は改善傾向にあること(https://doi.org/10.1001/jama.2025.3026)、男性、高齢、レースの後半などがリスク因子となることが示唆されている。
フランスParis Cité UniversityのChocronらは、Paris Sudden Death Expertise Centre Registry Dataを解析し、2011年から2024年にかけて(2020年を除く)パリ市で開催されたハーフマラソン、フルマラソン、20 kmマラソンで発生したSCAの男女別発生率を算出し、さらに5 kmごととゴール地点に設置された計測ポイントのタイムとSCAの相対リスクの関連を検討した。
結論
ハーフマラソン・フルマラソンで合計969,047名の完走者が記録され、初回参加時の平均年齢は37.1歳で、61%が男性であった。パリ20 kmマラソンでは、さらに270,178名の完走者が記録された。
期間中にこれらのイベントで発生したスポーツ関連SCAは17件であった。平均年齢(±標準偏差)は42±13歳で、うち15名が男性であった。15名が生存し、いずれも神経学的良好アウトカムであった(14名がCPC 1, 1名がCPC 2)。
20 kmマラソンのSCA(n=7)のうち6件、ハーフマラソンのSCA(n=5)のうち3件がラスト1 kmで発生していた(相対リスク 15.2)。この偏りはフルマラソンでは確認されなかった(5件中1件のみ)。
ハーフマラソンでは20 km地点とゴールの21.097 kmでの計測によりラスト1 kmの加速が観察可能であり、完走者の87%がこの区間で加速をしていた。特に2 km/h超の加速をした完走者は男性で有意に多かった(相対リスク 1.96)。
評価
アメリカのRACER研究や日本のJAAFのデータもレースの後半1/3〜1/4にSCAが集中していることを明らかにしているが、本研究ではさらにラスト1 kmに高度な集中がある可能性を示唆した。
多くの完走者、特に男性がこの区間でペースを上げていることから、著者らはラストスパートとSCAのつながりを示唆している。ただし、SCA例でペースアップがあったかどうかは不明であり、あくまで仮説生成的研究とみるべきであろう。


