映像を介した心肺蘇生指導は院外心停止でのCPR実施率・継続率に影響せず:TACTIC試験
Telemedicine-assisted vs conventional telephone instruction in cardiopulmonary resuscitation: the TACTIC cluster randomized trial

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
Resuscitation
年月
September 2026
226
開始ページ
111191

背景

通信指令員の口頭指導のもとで行われる心肺蘇生(dispatcher-assisted CPR)は院外心停止のアウトカム改善と関連するが、電話による指示では指令員がCPRを直接視認できないという制約がある。映像を活用した口頭指導(telemedicine-assisted CPR; video-assisted CPRとも)は、シミュレーション研究のレベルではCPRパフォーマンスを改善することが示唆されているが、患者アウトカムへの影響は未詳である。
タイMahidol UniversityのRiyapanら(TACTIC)は、非外傷性院外心停止が疑われる成人患者を月単位でTA-CPRまたはDA-CPR(対照)へと割り付け、バイスタンダーCPR実施率などを比較する実用的クラスターRCTを実施した。

結論

TA-CPR群の患者はDA-CPR群よりも若く(平均63.5歳 vs. 68.9歳)、初期リズムがショック可能であった割合も高かった(20.0% vs. 9.4%)。
バイスタンダーCPRの実施率はTA-CPR群で87.3%、DA-CPR群で92.5%と有意な差を認めなかった。
救急隊到着時のCPR継続率も同様であったが(76.4% vs. 84.9%)、到着時のCPRのプロトコル遵守率はTA-CPR群で低かった(69.1% vs. 92.5%)。

評価

TA-CPRは、視覚情報に基づき圧迫速度、手の位置などを補正しやすいという利点がある一方、複数人のバイスタンダーが必要、CPR開始までに時間を要するなどの欠点もあり、日本の最新ガイドラインは推奨・提案を行っていない。
タイで実施されたこの小規模RCTではTA-CPRとDA-CPRで実施率や継続率に差がなく、プロトコル遵守率はTA-CPR群で低下するというやや意外な結果が示された。一方で、最近の韓国の大規模観察研究はTA-CPRによってアウトカムが改善することを示唆しており(https://doi.org/10.1016/j.resuscitation.2026.111009)、このテーマはまだ決着には遠いというのが実情であろう。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)