生成AIは通信指令員として院外心停止での口頭指導を行えるか
An Artificial Intelligence-Enabled Cardiopulmonary Resuscitation Instructor
背景
院外心停止(OHCA)ではバイスタンダーによる早期の心肺蘇生(CPR)が生存の鍵であり、通信指令員も通報中のOHCA認識、CPRの必要性判断、CPRの指導という重要な役割を担うが、人間主導のシステムゆえのばらつきや遅延がネックとなっている。
アメリカUniversity of California San Diego School of MedicineのDesaiらは、救急シナリオをAPI経由で入力し、複数の汎用大規模言語モデル(ChatGPT, Claude, Gemini, Grok, Llama, Mistral)のCPR指導能力を評価した。
さらにこの結果をもとに、Llama 3.3 70B Instruct Turboを基盤モデルとしてCPR専用のAIエージェント、ChatCPRを開発し、同一の救急シナリオ、および実際の911緊急通報データ(文字起こし)を用いて評価した。
結論
OHCAシナリオにおいて、モデルは最低限満たすべき評価基準(13項目)の89.7%を達成した。達成率が最も低かったのはGemini(79.4%)、最も高かったのはGrokとClaude(97.1%)であった。
27項目の完全評価基準では69.8%が達成され、達成率が最も低かったのはLlama(61.3%)、最も高かったのはGPT-4o(75.0%)であった。
開発されたCPR専用エージェント、ChatCPRは同じOHCAシナリオにおいて13項目基準・27項目基準とも達成率100%であった。
通信指令員によってCPR指導がなされた実際の911通話記録においても、ChatCPRの達成率は各100%、98.9%であり、人間の通信指令員と比較して有意に改善した(84.5%, 62.8%)。
評価
既存のAIモデルはシミュレーションシナリオに対して基本的なCPR指示が可能で、さらに開発されたCPR専用AIは、実際の911通話記録に対して人間の司令員よりも適切な指示を生成することができた。
最近多くのAIで導入されている音声モードではなくテキストベースでの検証である点、通報者からのフィードバックを考慮しないopen-loopな評価である点など技術的課題は多く、直ちに業務導入が可能なモデルとは言えないが、有望な概念実証である。


