アメリカにおける2050年までの暑熱曝露の心血管疾患負担を予測
Projected US Cardiovascular Disease Burden From Heat Exposure for Future Greenhouse Gas Scenarios
背景
気候変動による気温上昇は、これまで改善傾向にあった心血管疾患(CVD)による死亡率を悪化させる懸念がある。
アメリカHarrington Heart and Vascular InstituteのRajagopalanらは、国内全郡の2010〜2016年のデータに基づき、2050年までの温室効果ガス排出シナリオ(SSP2-4.5およびSSP5-8.5)下における暑熱関連CVD負担を予測・検証した。
一次アウトカムは、年齢・所得・地域別に層別化された、暑熱に起因するCVD負担(人口10万人あたりDALYで定量)であった。
結論
最高排出(SSP5-8.5)シナリオ下の2050年には、一次アウトカムは、現在の138.5 DALYから418.2 DALYへと約3倍増加し、年間約5〜7万人のCVDによる超過死亡が発生すると予測された。また、人口高齢化の影響のみで2050年までに暑熱起因CVDの総DALYが34%増加することが示され、さらに中・低所得の郡では高所得の郡の約2倍の相対的増加を記録した。
評価
類似の予測がなされてきたが、この研究は全米を郡単位で分析した精度に特徴がある。歴史的に比較的涼しい北西部で基準時点の暑熱負担が国内中央値の5倍以上と高かった事実は、高温地域のみがリスクに晒されているという既存の認識を覆す重要な知見である。経済的弱者や高齢者への暑熱負担の偏重も明示されている。ただし、州レベルのCVDデータを郡レベルへ縮小適用したことによる都市・地方間の格差の過小評価、郡内におけるヒートアイランド現象の不均一性の未反映、気候変動に伴う人口移動や他の死因との競合リスクが考慮されていない等の限界がある。


