IRAによるメディケアのインスリン自己負担35ドル上限化政策の効果を検証
Insulin Costs and Use by Medicare Beneficiaries After the Inflation Reduction Act Out-of-Pocket Cap
背景
アメリカメディケアでは、受給者のインスリン自己負担費用が高く、不適切な使用中断や治療アドヒアランスの低下を招いてきた。
アメリカEmory UniversityのMyersonらは、2023年のインフレ抑制法(IRA)施行による「30日分あたり35ドル」の自己負担上限設定が、受給者(約290万人)の薬代と使用挙動に与えた影響を検証した。
一次アウトカムは、30日分のインスリン供給量あたりの自己負担費用(平均値と年間範囲)、30日分のインスリン補充回数、アドヒアランス(基礎インスリンを投与した日数の割合)、および継続性(基礎インスリンを投与しなかった日数がない)であった。
結論
上限設定後、30日分あたりの平均自己負担額は22.95ドルから18.16ドルへと21%減少し、年間の価格変動幅48%縮小した。全体での使用量増加はみられなかったが、過去に平均58ドル以上負担していた上位10%層では、年間の30日分処方補填数が10.4回から11.2回へと8%増加し、アドヒアランスも5%向上した。
評価
アメリカにおける近年最大の医療政策のアウトカムを検証した重要論文で、この政策が患者の経済的負担軽減と治療アクセス改善に直結したことを示した。メディケアでカバーされる高齢者層を対象としたこの政策は、しかし、公的支援の網の目から漏れた現役世代の貧困・労働者層の糖尿病患者には、恩恵はない。


