人工呼吸器を装着するICU急性呼吸不全患者での去痰剤は有害無益か:MARCH試験
Carbocisteine or Hypertonic Saline for Acute Respiratory Failure
背景
侵襲的人工呼吸器の使用は、粘液線毛クリアランスの低下や分泌物の量・レオロジーの変化により、分泌物の貯留を引き起こす。これに対処するため集中治療室(ICU)では去痰薬の使用が一般的に行われているが、去痰薬の使用が人工呼吸器装着患者のアウトカムを改善するという明確なエビデンスはない。
イギリスQueen's University BelfastのConnollyら(MARCH)は、同国71施設で、人工呼吸器を装着する16歳以上の重症急性呼吸不全患者を対象に、カルボシステイン経腸投与、高張食塩水ネブライザー投与、カルボシステインと高張食塩水の併用、通常治療を2×2要因デザインで割り付け、人工呼吸器離脱までの期間を比較するRCTを実施した(n=1,956)。
結論
人工呼吸器装着期間の中央値は、カルボシステイン投与群で186.1時間、カルボシステイン非投与群では172.7時間であり(調整ハザード比 0.96)、高張食塩水投与群では184.5時間、高張食塩水非投与群では174.3時間であった(調整ハザード比 1.00)。
臨床的に重要な上部消化管出血はカルボシステイン投与群で有意に増加した(1.4% vs. 0.2%; リスク比 6.51)。気管支拡張薬を必要とする気管支攣縮(2.4% vs. 0.4%; リスク比 5.73)、およびネブライザー中の低酸素血症(4.1% vs. 0.3%; リスク比 13.29)は高張食塩水投与群で有意に多く認められた。
評価
侵襲的人工呼吸患者での去痰薬にはエビデンスが乏しく、ガイドラインでも明確な推奨は行われていなかったが、本試験ではカルボシステイン・高張食塩水ともベネフィットは認められず、安全性アウトカムの悪化もみられた。
異なる作用機序の去痰薬(mucolytic/mucokinetic)にはまだ検証の余地があるが、新たなデータが現れるまではルーチンに去痰薬を用いる実践は見直される必要がありそうだ。


