原発からの距離はがん死亡リスクの増加と関連:アメリカ調査
National analysis of cancer mortality and proximity to nuclear power plants in the United States

カテゴリー
がん
ジャーナル名
Nature Communications
年月
February 2026
17
開始ページ
1560

背景

世界的に見ると、原子力発電は化石燃料に依存しない重要なエネルギー源とみなされている。一方で、原子力発電所には周囲への放射性汚染物質の放出・拡散を通じ、がんの発症リスクと関連するのではないかとする懸念が存在し続けている。
アメリカHarvard T.H. Chan School of Public HealthのAlwadiらは、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)による2000年から2018年までのアメリカ全土の死亡率データを用い、郡レベルでの原子力施設への近接性とがん死亡リスクとの関連を評価した。
近接度は、200km以内にある稼働中の原子力発電所からの距離の逆数として計算され、死亡リスクに影響する可能性がある共変量として社会経済的、人口統計学的、行動的、環境的、医療的因子の調整が行われた。

結論

原子力発電所への近接度は、がん死亡率と正に相関していた。35〜44歳の男女を除く、45歳以上のすべての年齢層で関連が認められ、女性では55〜64歳(1.19)、男性では65〜74歳(1.20)で相対リスクが最も高くなった。

評価

原発と周辺住民のがんリスクとの関連はこれまでも様々な国で調査が行われているが、結果は一貫していない。
本研究は全米規模のデータから原発への近接度ががん死亡と関連することを示したが、あくまで原発からの距離を変数とし、放射線量などのデータは用いておらず、ここで見られた関連がすなわち放射性汚染物質との因果関係を意味するわけではない。
原発との距離が、社会経済条件や医療アクセスの代理指標となっている可能性も十分に考えられ、もしそうであれば、それ自体解決を要する健康格差のシグナルとなる

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(がん)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Journal of Clinical Oncology (JCO)、Journal of the National Cancer Institute(JNCI)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、Cancer Research (Cancer Res)