世界の虚血性心疾患の30%は鉛に起因する:GBD2023
Lead-Attributable Cardiovascular Disease Burden: Global Burden of Disease Study 2023
背景
ガソリンや塗料からの鉛除去により血中鉛濃度は低下傾向にあるが、過去の蓄積や開発途上国での汚染継続が懸念されている。
アメリカUniversity of WashingtonのStanawayらは、1990〜2023年の米国国民健康栄養調査(NHANES)の成人42,028名のデータを解析し、骨中鉛濃度と心血管疾患(CVD)死亡リスクの関連を推計した。
一次アウトカムは、年齢・性別・年次・地域別の鉛関連CVD死亡率・障害生存年数(YLD)・損失生存年数・障害調整生命年(DALY)であった。
結論
2023年、世界で350万人(全死亡の5.8%)の死亡と、7,150万DALYが鉛曝露に起因すると推定された。骨中鉛濃度が5μg/g、25μg/g、100μg/gと上昇するにつれ、CVD死亡リスクはそれぞれ7.5%、41.3%、87.9%と有意に増大する。これは、鉛が世界的な死亡リスクの第8位、環境リスクとしては大気汚染に次ぐ第2位であることを示しており、虚血性心疾患(IHD)の29.6%が鉛に起因している。
評価
NHANESデータから得られた推定式を世界各国の推計鉛曝露データに適用して行われたシミュレーションである。IHDに対する鉛の「直接的な影響」を算入したことで、従来の推計(GBD 2021)より疾病負荷は2倍以上に跳ね上がった。特に、脳卒中に直接的な関連がみられなかった一方、心筋梗塞等の虚血性疾患には血圧調整後も強い相関が残るとした。
高所得国での歴史的高曝露(1930〜40年代生まれがピーク)と、現在も曝露が続く低・中所得国(サハラ以南アフリカ等)の対比が注目される。過去の蓄積による将来のCVDリスクを低減するために、キレーション療法などの個別医療介入だけでなく、環境浄化や規制強化の公衆衛生介入の強い根拠を示した。


