救急における超音波ガイド下神経ブロックの実施率を高めるには
Ultrasound-Guided Regional Anesthesia by Emergency Physicians for Hip Fractures and Delirium: A Randomized Clinical Trial

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
JAMA Network Open
年月
December 2025
8
開始ページ
e2549337

背景

股関節骨折患者の鎮痛においては、局所麻酔がせん妄リスクの低減と関連するとされる。超音波ガイド下局所麻酔(POCUS-GRA)は神経血管構造の視覚化により局所麻酔の安全性・有効性を高めるが、股関節骨折に対する救急医の局所麻酔使用率は低いというデータがある。
カナダSinai HealthのLeeらは、同国7施設の大学病院救急の救急医を対象に、2時間の腸骨筋膜ブロックのトレーニングセッションと、その後のコンピテンシーアセスメントを実施し、65歳以上の股関節骨折患者の受診後7日間のせん妄発生率に与える影響を評価する、ステップウェッジ方式多施設クラスターランダム化臨床試験を実施した。

結論

期間中に694名の適格患者が受診した。対応した救急医は213名で、うち208名(97.7%)がトレーニングを受けていた。トレーニング前の医師に診療を受けた患者(対照群)は248名、トレーニング後の医師による診療を受けた患者(介入群)は446名であった。
神経ブロックの実施率は対照群の2.2%から、介入群では51.7%に上昇した。
交絡因子などを調整後、介入群でのせん妄リスクの低下が認められた(オッズ比 0.72)。せん妄平均日数に有意な減少はみられなかった。
鎮痛の有効性評価が行われた神経ブロック(n=186)では、57.5%で50%以上の疼痛減少が認められ、90.0%が25分未満で施術が完了し、合併症として軽微な血腫が1例のみ発生した。

評価

同じチームによる先行研究では「トレーニングの不十分さ」と「ブロックに要する時間」への懸念が、POCUS-GRA実施の障壁として特定されていた(https://doi.org/10.5770/cgj.16.52)。本試験は、この点をターゲットとしたトレーニングがPOCUS-GRA実施率を大幅に高めること、さらにせん妄の発生を抑制することも同時に実証した。
エビデンスの現場への実装(Knowledge to Practice)のモデルケースとして、参考になる報告である。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)