がん終末期における血管浸潤の役割に新たな光
Macrovascular tumor infiltration and circulating tumor cell cluster dynamics in patients with cancer approaching the end of life
背景
がんの治療は長足の進歩を遂げているが、依然として多くの患者ががんによって死に至る。しかし、その致死性の根底にある転移ステージの病態生理学には、未詳な点も多い。
アメリカUniversity of Texas Southwestern Medical CenterのNewcomerらは、腫瘍関連合併症により死亡し、剖検報告書が記録された固形がん患者108名の死因に関して、専門家パネルでの一致率を推定し、さらに患者の腫瘍塞栓・大血管浸潤について調査を行った。その後、腫瘍関連イベント固形がん患者21名とがんの認められない患者10名を対象とした前向症例対照研究を行い、進行末期の血中循環腫瘍細胞(CTC)数と死亡時の血管浸潤を評価し、さらにがん患者1,250名からなる後向検証コホートにおいて大血管浸潤の予後予測能を評価した。
結論
固形がん患者108名の死因に関して、専門家パネル全体の一致がみられたのはわずか16%であり、大半(51%)の患者では3名以上の専門家が最終的死因について不一致となった。このうち92名においては、剖検から得られたHE染色スライドの調査が行われ、88%で腫瘍塞栓が陽性、10%では大動脈・静脈に腫瘍塞栓が認められた。CTの調査では59%に大血管浸潤の兆候が認められた。
固形がん患者21名と対照患者10名での前向症例対照研究においては、がん患者における経時的な腫瘍マーカーの上昇、凝固状態の亢進とともに、CTC数、クラスターサイズの顕著な増大が認められた。病理学的分析では、多くのタイプのがん患者で血管壁・内腔への浸潤と、開存を阻害する腫瘍血栓が確認された。また、死の直前に撮影されたCTからは、大動脈大静脈間の腫瘤が増大し下大静脈壁に浸潤していることが認められた。
後向コホート1,250名においては、遠隔転移が確認された時点での大血管浸潤が、血管浸潤のない患者と比して有意に短いことが明らかにされた。また、浸潤の頻度が高い主要な血管のうち、腹部大動脈と下大静脈への浸潤で最もハザード比が高かった。
評価
進行期のがん患者では血管イベントのリスク増加が知られているが、病状悪化や治療に伴う付随的事象として理解されることが多い。この研究は、終末期に近いがん患者の血管病理の検証から、CTCの急増や大血管への腫瘍浸潤が終末期プロセスにおいて重要な役割を果たしているという仮説を提示した。
がんの転移・死亡プロセスの理解に新しい視点をもたらすだけでなく、CTCや血管浸潤を用いた予後予測、さらにこれらを標的とした介入の可能性も示唆する興味深い知見である。


