ヒト心筋で糖尿病合併虚血性心筋症を分子プロファイリング
Left ventricular myocardial molecular profile of human diabetic ischaemic cardiomyopathy
背景
2型糖尿病(T2DM)は心不全リスクを高めるが、心筋細胞に及ぼす直接的影響には不明点が多い。
オーストラリアUniversity of SydneyのLalらは、移植待機患者から提供されたヒト心筋組織を解析し、DMを伴う心不全患者の心筋組織の分子シグネチャを特定した。
結論
マルチオミクス解析の結果、DM合併虚血性心筋症では、脂質代謝・酸化ストレス・心筋線維化・細胞骨格関連タンパク質の異常が顕著であった。特に脂肪酸の輸送・酸化に関わるタンパク質のダウンレギュレーションが最も著しい一方、他の代謝指標からは脂質代謝が完全には損なわれていない可能性も示唆された。
評価
患者心でDMと虚血性心筋症との関連をプロテオミクス解析した初の研究により、DMが心臓の代謝構造をミクロレベルで作り変えることをヒトで実証した。著者らは、特に脂肪酸代謝の低下と酸化ストレスの増悪との相関を強調しており、これがDM患者の予後不良の鍵である可能性を示唆している。本研究で示された代謝の「リワイヤリング」は、これまでの臨床試験(EMPA-REG等)で心不全入院リスクを約30〜35%減少させたSGLT2阻害薬の効果メカニズムを裏付けるものでもある。同薬が提供するケトン体等高効率な燃料の供給が、DMによるエネルギー枯渇と線維化を食い止める鍵となることが、分子レベルの知見からも裏付けられた。


