緊急気管挿管でエトミデートをケタミンに変更しても死亡率低下せず:RSI試験
Ketamine or Etomidate for Tracheal Intubation of Critically Ill Adults
背景
緊急気管挿管における導入薬には、プロポフォール、ミダゾラム、ケタミン、エトミデートなどが国際的に用いられているが、それぞれ一長一短がある。アメリカでは、重症患者に対する導入薬として循環抑制の少ないエトミデートが定番化しているが、副腎抑制のリスクも指摘されており、ケタミンとの優劣が長年の論争となっていた。
アメリカVanderbilt University Medical CenterのCaseyら(RSI)は、同国14ヵ所の救急外来・集中治療室において、気管挿管を受ける重症成人患者での麻酔導入として、ケタミンまたはエトミデートを割り付け、28日院内死亡率を比較するRCTを実施した(n=2,365)。
結論
28日院内死亡率は、ケタミン群で28.1%、エトミデート群で29.1%と差がなかった。
二次アウトカムのうち、挿管中の心血管虚脱はケタミン群で有意に増加し(22.1% vs. 17.0%)、安全性アウトカムに差はなかった。
評価
重症患者、特に敗血症患者ではエトミデートによるコルチゾール産生の阻害が重要になる可能性があり、小児敗血症でエトミデートを非推奨とするガイドラインもあったが、この試験では死亡アウトカムに有意な差は認められず、心血管イベントはケタミン群で増加した。
エトミデートが承認されていない日本などでは影響が小さいものの、エトミデートが選択肢となる国では忌避の流れを変える可能性のあるエビデンスとして注目される。


