髄膜腫ではTERTp変異よりもTERT発現の方が重要か
Analysis of TERT association with clinical outcome in meningiomas: a multi-institutional cohort study

カテゴリー
がん
ジャーナル名
The Lancet Oncology
年月
September 2025
26
開始ページ
1191

背景

TERTプロモーター(TERTp)変異は、髄膜腫の予後不良マーカーとして有力視され、2021年のWHO分類第5版ではグレード3の診断基準に導入された。しかし、TERTp変異がなくてもTERTが高発現している腫瘍の存在、CDKN2A/Bホモ接合欠失のインパクトを強調するより最近の研究から、独立予後因子としてのTERTp変異の意義は疑問視されている。
カナダUniversity Health NetworkのGuiらは、2000年から2024年に、同国Toronto Western Hospital(発見コホート, n=380)、またはカナダ・ドイツ・アメリカの外部施設(検証コホート, n=861)で外科的切除を受けた髄膜腫を後向解析し、TERT発現の有病率および予後との関連を調査した。

結論

TERTp野生型の髄膜腫の28.7%でTERTが発現していた。
発見コホートにおいて、TERT発現患者の無増悪生存期間(PFS, 中央値3.2年)は、TERT陰性患者(16.0年)よりも短く、TERTp変異患者(1.6年)よりも長かった。この知見は検証コホートでも同様に認められた。
WHOグレードについてみると、TERTが発現する患者のPFSは、1グレード上のTERT陰性患者と同等であり、例えば、TERT発現患者はグレード2で中央値3.6年であったのに対し、TERT陰性患者ではグレード3で3.8年であった。TERTp変異、CDKN2A/B欠失、染色体1p/22q変異、WHOグレードで調整した後も、TERT発現はPFS短縮と関連した(ハザード比 1.85)。

評価

予後因子としてのTERTp変異の意義を再検討したもう一報の論文とともに、Lancet Oncology誌に併載された(https://doi.org/10.1016/S1470-2045(25)00422-X)。
本論文は、髄膜腫ではTERTp変異よりTERT発現が本質的である、という説得力のあるデータを与えており、今後、TERT発現情報をどのように臨床に組み込むのか研究が活発化するだろう。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(がん)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Journal of Clinical Oncology (JCO)、Journal of the National Cancer Institute(JNCI)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、Cancer Research (Cancer Res)