1型糖尿病高リスク乳幼児への経口インスリンによる一次予防は可能か:POInT試験
Efficacy of once-daily, high-dose, oral insulin immunotherapy in children genetically at risk for type 1 diabetes (POInT): a European, randomised, placebo-controlled, primary prevention trial

カテゴリー
生活習慣病、Top Journal
ジャーナル名
The Lancet
年月
November 2025
406
開始ページ
2564

背景

経口インスリン投与で膵島関連自己抗体の発生を抑制できる、という仮説がある。
ドイツTechnical University of MunichのZieglerら(POInT)は、遺伝的高リスクの生後4〜7ヵ月の乳幼児を対象に、高用量経口インスリンを毎日投与することで、膵島関連自己抗体の発生と糖尿病(DM)の発症を予防できるかを評価した。
スクリーニングを受けた新生児241,977名の1.14%が膵島自己免疫疾患の発症リスクが遺伝的に高く、この高リスク乳児の38.2%を経口インスリンまたはプラセボに割り付けた。
一次アウトカムは、最大6.5歳までの追跡調査を通じて評価された、2つ以上の膵島関連自己抗体またはDMの発症であった。

結論

高用量経口インスリンの一次アウトカム効果を認めなかった。しかし、INS遺伝子型との薬理遺伝学的相互作用が認められた。感受性遺伝子型を持つサブグループではDMや血糖異常の発症を有意に予防(HR 0.38)し、非感受性遺伝子型では自己抗体リスクを増加させた。安全性は良好で、重篤な低血糖は稀であり、有害事象の発生率は両群で同程度であった。

評価

長く結論の出ていない「免疫寛容誘導仮説」に対して行われた最新の本格検証だが、一次アウトカム効果を見出すことはできなかった。ただし、投与量・タイミング・経路・抗原インスリンの選択が不適切だった可能性も示唆されている。INS遺伝子型による応答差を見出したことは、治療対象児の選別可能性につながる重要知見であり、INS遺伝子型に基づいた予防試験を正当化する。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(生活習慣病)

Journal of the American Medical Association (JAMA)、The New England Journal of Medicine (NEJM)、Lancet、Diabetologia、Diabetes Care (Diabetes Care)