CRISPR-Cas9によるANGPTL3遺伝子編集が第1相を通過
Phase 1 Trial of CRISPR-Cas9 Gene Editing Targeting ANGPTL3
背景
ANGPTL3を標的化する脂質異常症の遺伝子治療が試みられている。
アメリカCleveland ClinicのNissenらは、治療抵抗性の脂質異常症患者15名に対し、肝ANGPTL3を標的化して機能喪失型変異を誘導するCRISPR-Cas9治療薬 CTX310(CRISPR Therapeutics社)を単回静脈内投与し、その安全性・有効性を評価する用量漸増第1相試験を実施した。
一次エンドポイントは、用量制限毒性(DLT)作用を含む有害事象であった。
結論
一次エンドポイントは認められなかった。
重篤有害事象は2名(13%)に発生したが、これらは治験薬とは関連がないと判断された(椎間板ヘルニア発症、および低用量投与179日後の突然死)。注入関連反応は3名(20%)に報告された。また、1名(7%)に一過性のアミノトランスフェラーゼ上昇(Grade 2)がみられたが、14日目までにベースライン値に戻った。
ANGPTL3値は用量依存的に減少し、最高用量域(0.7 mg/kgおよび0.8 mg/kg)では平均−70%以上の顕著な低下が認められた(それぞれ−79.7%、−73.2%)。
評価
すでに抗体治療薬のある同疾患に対する、初めてのCRISPR-Cas9in vivo遺伝子治療である。単回投与でLDL-CとTGを同時に半減させる「前例のない」結果は、生涯にわたる服薬の問題を解決するブレークスルーとなる可能性がある。不可逆的治療のため、長期の安全性フォローアップが必須となる。なお、このテーマは競争が激しく、Verve Therapeuticsは、PCSK9とANGPTL3のベース編集の初期相試験を進めている。


