個別リスクに基づく患者・医療者へのメッセージは大腸がん検診の受診率を高めない
Effect of Personalized Risk Messages on Uptake of Colorectal Cancer Screening : A Randomized Controlled Trial
背景
便潜血検査あるいは大腸内視鏡による大腸がん検診は、がん死亡率を低下させることが実証された検診戦略であるが、受診率には改善の余地がある。
アメリカIndiana University School of MedicineのSchwartzらは、2つのヘルスケアシステムに属するプライマリケア施設の医療提供者(n=214)と50〜75歳の平均リスク患者(n=1,084)を対象として、医療提供者・患者への個別化されたリスク情報の提供が、検診検査の完了率を高めるかを検証する2×2要因デザインによるRCTを実施した。
2×2要因は、患者へのadvanced colorectal neoplasia(ACN)リスクに応じて個別化されたメッセージを含む/含まない意思決定支援ツールの提示、および医療提供者への患者個別リスクの情報を含む/含まないカルテ通知であった。
結論
患者が利用する意思決定支援ツールへの個別化されたメッセージの追加(個別化あり36.8% vs. なし41.0%)、および医療提供者への個別化された通知(個別化あり41.5% vs. なし36.4%)とも検診完了率を高めなかった。
2つのヘルスケアシステムのうち、一方では医療提供者への通知のみが個別化されていた場合、便潜血検査の利用が増加し(21.1% vs. 7.9%)、患者の使用する意思決定支援ツールのみが個別化されていた場合も、便潜血検査の利用が増加した(21.4% vs. 7.9%)。
評価
患者個別のACNリスクに合わせたメッセージを患者・医療提供者に提示しても、全体として検診受診率は高まらなかった。リスク情報のみに基づいて合理的行動を促すことの限界を示す結果とも考えられる。
ただ、一部の施設では、過剰な内視鏡検診の選択が抑制されたというシグナルもあり、検診全体の効率性への影響は慎重に測られる必要がありそうだ。


