心筋梗塞後の心不全のない患者に対するβブロッカーの長期投与を支持:BETAMI-DANBLOCK試験
Beta-Blockers after Myocardial Infarction in Patients without Heart Failure

カテゴリー
循環器、Top Journal
ジャーナル名
The New England Journal of Medicine
年月
August 2025
393
開始ページ
1901

背景

心筋梗塞(MI)後のβブロッカー(BB)使用の有益性を示す過去のエビデンスはすでに古く、また、左室駆出率(LVEF)40%以上の患者に対する有効性は確立されていない。
ノルウェーVestre Viken Trust Drammen HospitalのMunkhaugenら(BETAMI-DANBLOCK)は、LVEF40%以上のMI患者5,574名を対象に、発症後14日以内のBB長期使用の有効性・安全性を検証するRCTを行った(対照: BB非投与)。
一次エンドポイントは、全死因死亡または主要心血管イベント(MACE)(新規心筋梗塞・予定外冠動脈血行再建術・虚血性脳卒中・心不全・悪性心室性不整脈)の複合であった。

結論

追跡期間中央値3.5年で、BBの一次エンドポイント効果を認めた[14.2% vs. 16.3% (HR 0.85)]。
全死因死亡はBB投与群と非投与群とで、全死因死亡は 4.2% vs. 4.4%、心筋梗塞は5.0% vs. 6.7%、予定外冠動脈血行再建術は3.9% vs. 3.9%、虚血性脳卒中は1.6% vs. 1.3%、心不全は1.5% vs. 1.9%、悪性心室性不整脈は 0.5% vs. 0.6%で発現した。安全性アウトカムに群間差はなかった。

評価

歴史の長い主題だが、最新の治療ランドスケープでは、LVEF保持MIではBB長期投与は疑問(BB継続は不要)という意見も多かった。このノルウェー試験は、この意見に抗し、BBの長期継続は有益、という最新のエビデンスを示して既存ガイドラインを支持したもので、重要である。ここでの効果は、主に新規MI発生率の低下(HR 0.73)に起因しており、これはBBの心保護作用が、現代の治療法(DAPT・スタチン等)と独立して臨床的利益をもたらすことを示唆している。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(循環器)

Journal of the American College of Cardiology(JACC)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、American Heart Journal (AHJ)、Circulation、The Journal of the American Medical Association(JAMA)