セマグルチドのMACE抑制効果は減量幅と独立:SELECT試験二次解析
Semaglutide and cardiovascular outcomes by baseline and changes in adiposity measurements: a prespecified analysis of the SELECT trial
背景
SELECTは、糖尿病のない過体重/肥満の心血管疾患患者において、GLP-1受容体作動薬セマグルチドが主要有害心血管イベント(MACE)を低減することを示した。
イギリスUniversity College LondonのDeanfieldらは、17,604名を対象とした同試験の事前規定解析を行い、ベースラインの肥満度と治療による体脂肪変化が、その後のMACEリスクにどのように関連するかを検討した。
結論
セマグルチドの心保護効果は、ベースラインの体重や総体重減少と関連が少なく、肥満度にかかわらず、MACE発生率は一貫して低下した。投与早期段階で達成された体重減少幅と最終的なMACEリスク減との間には強い線形相関はなかった。MACE抑制効果の約33%は、ウエスト周囲径の減少によって媒介されると推定された(HR 0.86)。
評価
GLP-1RAの心血管系心臓保護作用の本体は未だ不祥で、既存研究は「体重減も寄与している」という議論に留まっていた。この論文は、「体重減少は心血管ベネフィットの主要な介在因子ではない」という、興味深い結論を大規模データの調停分析で初めて導いたものである。心血管利益がウエスト周囲径(内臓脂肪の指標)の減少とより密接に関連していたことは、セマグルチドによる内臓脂肪の減少が、代謝・炎症経路を改善している可能性を示唆する。しかし、この効果でもMACE抑制効果の33%しか説明できず、さらに多くの多面的作用が示唆される。


