早期PAH患者にもソタテルセプトを:HYPERION試験
Sotatercept for Pulmonary Arterial Hypertension within the First Year after Diagnosis
背景
アクチビンシグナル伝達阻害薬(ASI)ソタテルセプトは、罹病期間の長い肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者の罹患率・死亡率を低減するが、診断後1年未満の早期PAH患者における効果は。
アメリカUniversity of MichiganのMcLaughlinらは、診断後1年未満で、死亡リスクが中等度または高度、2剤/3剤による基礎治療を受けているPAH成人患者320名を対象に、21日毎のソタテルセプト皮下注の有効性を検討する第3相RCTを行った(対照:プラセボ)。一次エンドポイントは、臨床的悪化(全死因死亡・入院・運動耐容能悪化の複合)である。
結論
ソタテルセプトの一次エンドポイント効果を認めた(HR 0.24)。運動負荷試験のパフォーマンス低下は、ソタテルセプト群の5.0%、プラセボ群の28.8%に発生した。PAHの悪化による予定外の入院はそれぞれ1.9%と8.8%に発生し、全死因死亡は4.4%と3.8%に発生した。心房中隔開窓術(Atrial Septostomy)または肺移植は実施されなかった。ソタテルセプト群で最も多くみられた有害事象は、鼻血(31.9%)・毛細血管拡張症(26.2%)であった。
評価
Merck Sharp and Dohmeがスポンサーしたソタテルセプトの適応拡張試験である。有効性を示し、早期介入の重要性を確認した。有効性はソタテルセプトの過去の試験(STELLAR・ZENITH)と同様であり、治療開始後わずか6週間で早期かつ持続的な便益が確認された。12ヵ月間で治療必要数(NNT)は5、安全性プロファイルは既報と概ね一致した。適応拡張承認は確実で、PAH治療のランドスケープを変えうる。なお、PAH薬開発の進展は早く、TORREYは、吸入セラルチニブの第2相通過を報告している(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38705167/)。


