ESR1変異をctDNAでモニタリングし治療スイッチすることでPFSを改善:SERENA-6試験
First-Line Camizestrant for Emerging ESR1-Mutated Advanced Breast Cancer
背景
ESR1遺伝子の変異は、アロマターゼ阻害薬とCDK4/6阻害薬の併用療法でみられる耐性獲得のドライバーとして知られている。PADA-1試験では、このESR1変異を血中循環腫瘍DNA(ctDNA)によってモニタリングし、ESR1変異の上昇がみられた患者でアロマターゼ阻害薬をフルベストラントへ切り替えることで、無増悪生存期間を延長できることが示されている(https://doi.org/10.1016/S1470-2045(22)00555-1)。
フランスInstitut CurieのBidardらは、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性で、アロマターゼ阻害薬とCDK4/6阻害薬を併用した初回治療を受けている進行乳がん患者(n=3256)において、2〜3ヵ月おきにctDNA中のESR1変異のモニタリングを行い、ESR1変異が認められ、かつ画像上進行が認められなかった患者(n=315)を、次世代選択的ER分解薬camizestrantへのスイッチ、またはアロマターゼ阻害薬の継続へと割り付け、無増悪生存期間を比較する第3相RCTを実施した。
結論
中間解析における無増悪生存期間の中央値は、camizestrant群で16.0ヵ月、アロマターゼ阻害薬群で9.2ヵ月であった(ハザード比 0.44)。
患者報告のGlobal health status/QOLに悪化が見られるまでの期間(中央値)は、camizestrant群で21.0ヵ月、アロマターゼ阻害薬群で6.4ヵ月であった(ハザード比 0.54)。有害事象による治療の中止は、各群1.3%、1.9%で発生した。
評価
ctDNAモニタリングに基づいてcamizestrantへ切り替えることで、アロマターゼ阻害薬を継続した場合と比して増悪リスクを半減させ、患者報告アウトカムの悪化も大きく遅らせることに成功した。
ER陽性乳がんの初回治療をさらに洗練させるアプローチとして注目されるが、早期の治療スイッチにより、臨床的進行まで二次治療に移行しない場合と比して生存期間が延長されるかは不透明であり、データが成熟するのを待つ必要がある。


